なんちゃって税理士のブログ

税理士、宅地建物取引士、相続アドバイザー 土屋雅資のブログです。 相続税を中心に、お得な節税情報等を発信していきます。

社長貸付金③

ヤッホー、皆さん、こんにちは!

 

もう11月ですね~。朝晩の温度差が激しいですね。

 

今年は「秋」がなくて、オープンに出来なくて、ちょっと残念です。

 

でも、私は「冬」のオープンも大好きです。防寒服で走ると全く問題ありません。

 

今回は相続時に被相続人が同族会社に対して有する「貸付金」対策をご紹介しますね。

 

同族会社への貸付金

 

例えば、皆さんの父ちゃんが同族会社(社長=株主=父ちゃんで、所有と経営が一致している会社)にお金を1億円貸しているなどで、被相続人の父ちゃんからの1億円の貸付金がそのまま残っているケースがあります。

 

同族会社(法人)側みると、B/Sの負債に「社長借入金1億円」と計上されています。

 

父ちゃんからの借入金1億円が同族会社のB/Sに計上された状態で、そのまま相続をむかえてしまったとき、この1億円の借入金は、父ちゃんの側から見れば1億円の貸付金として相続財産になりますので、これに対して相続税がかかります。

 

法人税の申告はするが、相続税のことを検討してない場合が実務でよくあります。このような、問題が生じさせないための生前対策をご紹介しますね。

 

1・貸付金の放棄 

法人税の計算では各事業年度で発生した欠損金を9年間繰り越すことができます。同族会社に3億円の青色欠損金があって、社長貸付金1億円が返済される見込みもない場合に、父ちゃんに債権放棄をしてもらいます。

 

父ちゃんから会社に対して債権放棄通知書を配達記録で郵送してもらいます。父ちゃんから債権放棄をしてもらった場合、会社では借入金がなくなった分の債務免除益が発生しますが、9年間利用可能な青色欠損金が債務免除益よりも多額であれば、相殺され法人税は発生しないことになります。1億円の債務免除益と3億円欠損金で、欠損金2億が残ります。

 

  

2・ 債権者の地位を贈与

 

債権者(父ちゃん)の地位を他者(相続人)に贈与することで、自分の債権金額を減らすことができます。年110万円の範囲内であれば、贈与税も課税されません。

 

父ちゃんの貸付金1億円を、相続人が5人いた場合には、年間1人200万円の債権譲渡を、各相続人に行います。贈与税は年間1人で9万円(200万円-110万円=90万円×10%=9万円)ですから5人で年間45万円の贈与税の申告・納付を10年実行すると贈与税は10年間で450万円支払う事になります。

 

仮に、父ちゃんの相続財産が60億円なら、この貸付金1億円に55%の相続税税率が課税されますから、5,500万円が相続税です。上記の贈与税450万円と比べて約5,000万円相続税が安くなります。まあ、これは父ちゃんが超資産家のケースです。

 

では、父ちゃんの相続財産が10億円ならこの貸付金1億円に30%の相続税税率が課税されますから、3,000万円が相続税です。上記の贈与税450万円と比べて約2,500万円の相続税が安くなります

 

では、父ちゃんの貸付金1億円は、年間1,000万円(各相続人は1人200万円)で10年間、債権譲渡をすればゼロになります。

 

注意点は、民法467条の債権譲渡の対抗要件を満たしているか否かです。ポイントは

 

①譲渡人(父ちゃん)が債務者(父ちゃん所有の同族会社)に通知すること。

 

債務者(父ちゃん所有の同族会社)が承諾すること。

 

上記①債権譲渡通知書または②債権譲渡承諾書を作成し、その書面を公証人役場に行って公正証書(その日付をもって確定日付とする)にしておく事が重要です。

 

または、郵便局から内容証明郵便を送達すれば、これも確定日付としてOKです。

 

 

3・デッドエクイティスワップ(DES)

 

DESとは債務(Debt)と株式(Equity)を交換(Swap)する取引のことです。スーパー大手だった「ダイエー」が使った手法です。今では、ダイエーは全て「イオン」傘下になってしましました。

 

 貸付金が株式に換わるため、同族会社の社長借入金1億円が、資本金に振り替わることです。自社株評価で、株式の価額が上がってしまうリスクに注意して下さい

 

 

注意点

  

相続発生前に債権放棄を行うことにより、貸付金を消滅させ、相続税評価額を引き下げる行為について、租税回避や同族会社の行為計算の否認が適用されるか否かが問題になります。

 

税務署は特に「1・貸付金の放棄」について、経済的合理性がないと判断し、1億円の貸付金を相続財産に計上するよに更正決定してきます。

  

同族会社に貸付金1億円があった際は、原則として相続財産への計上が必要です。よく相続人は会社が債務超過だから、10年以上大赤字だから、貸付金の回収可能性はないので計上不要と判断するケースがありますが、税務署は認めません。否認される可能性が非常に高いことに留意して下さい。

 

債務超過でも大赤字でも、課税時期=被相続人の死亡日に会社が存続している限りは、役員給与等を削減すれば長期にわたっても回収していけるはずと見做されるケースが多く、実際に裁判になった事例でも、ほとんどの事案で納税者が敗訴しています。

 

数少ない認められた事例でも、売上もなく役員報酬も払えない債務超過の状態で、実際に会社の清算手続き中であった中で相続が起きた等の特別な事情がある場合に限り、貸付金計上は不要と判断されています。

 

私のお勧めは、生前に同族会社を廃業・解散しておくことです。それが無理なら「2・ 債権者の地位を贈与=債権譲渡」を早く実施しておくことです。 土屋雅資