相続人の使込み(みなし贈与)
ヤッホー、皆さん、こんにちは!
昨日は横浜では、54年ぶりの積雪だったようで、真冬並みの寒さでしたねー。
1ヶ月早い、クリスマスイブでしょうか?
ちなみに、私はノロウイルスのお蔭でヘロヘロだったので、よく覚えていませんでした???
相続人の使込み
では今回は、被相続人(父=認知症)の2億円の相続財産を、生前に同居の長男(相続人)が1億5,000万円をFX取引で使込んで全額損して、その事を次男(相続人)に言わなかったとします。
その後、次男(相続人)が、妙に父の預金が少ないことに気づいて、長男の使込みを知ったケースで、もし相続税の申告を、残金の5,000万円(基礎控除後)でした場合を考えてみましょう!
相続税法 第九条=みなし贈与
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
上記が条文です。専門家以外の方は、???ではないでしょうか?
趣 旨
①個人間の贈与ではない
民法上の「贈与」は、贈与者(父)がタダで1億5,000万円を受贈者(長男)に、「父=あげるよ、長男=ラッキー、ありがとう、父ちゃん」とういう当事者間の意思表示の合致により成立する契約です。
②課税の公平
長男の1億5,000万円の使込みは、父の認知症より上記①の贈与契約は成立しないが、贈与契約が成立しないと贈与税を課税できないのは、不合理だから、相続税法第九条=みなし贈与に該当します。長男の結果受益が成立します。
③実質取得者の判断
長男は、1億5,000万円の経済的利益を受けているので、相続税法では、この金額が結果受益されたものとして、原則として、長男に1億5,000万円の贈与税を課税します。
- 相続開始前3年以内であれば、相続財産に1億5,000万円を加算して2億円に相続税を課税します。
- また、贈与税の時効=除斥は6年ですから、上記の3年超で、相続開始前6年までは1億5,000万円の贈与税が課税されます。
長男の言い分
被相続人=父の生前に、父の各預貯金口座から現金を出金し使った1億5,000万円の支払いは、すべて父=被相続人の医療費や生活費等に充てたもので、1億5,000万円相続財産として計上すべきものは存在しないよー!っと主張しました。
税務調査
税務署は、被相続人=父、相続人である長男・次男、更には長男・次男の妻や子供名義の預貯金や株式・FX取引を「質問検査権」という強力な国家権力を行使して調べます。
通常は被相続人=父の死亡日から10年間遡って、金融機関(銀行や、郵便局=現在は、ゆうちょ銀行)、証券会社(ネット証券)等を精査して、1億5,000万円のお金の流れを調査し、誰のお金かを判断します。
ちなみに、弁護士も税理士も裁判所でさえ(査察事案は除く)これほど強力な調査権は全くありませんので・・・。
預金の名義
被相続人の預金か否かは、「自己=被相続人に帰属する資金原資をもって、自己が管理支配を行う意思で、その者が直接、又は使者、代理人を通じて当該預金の預入契約をした者が、真の預金者である」という資金原資・管理支配基準が実務上の基準です。
簡単に言うと、被相続人の名義の預金以外でも、被相続人が稼いで蓄積したお金は、全て、被相続人の相続財産ですよ~っという事です。
ポイント
前回、ご紹介したケースでは、長男の1億5,000万円の使込みを裁判で証明するのは、至難の技でしたが、税務調査が入れば、一発で発見される可能性が非常に高くなります。
でも、相続税も増加するし、罰則金である①過少申告加算税=10%、②無申告加算税=15%、③延滞税=年14,6%=サラ金並、④最悪①②に代えて重加算税35%等が、他に課税されますので、皆さん、くれぐれも、覚えておいて下さい。 土屋雅資