なんちゃって税理士のブログ

税理士、宅地建物取引士、相続アドバイザー 土屋雅資のブログです。 相続税を中心に、お得な節税情報等を発信していきます。

法人税・短期前払費用

ヤーホー、皆さん、こんにちは!もう暦では9月です。じじいになってくる度に、1年経つのが加速度的に早く感じる今日この頃です。今回は「短期前払費用」をご説明しますね。

 

企業会計上の前払費用

すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければなりません。これを費用収益対応の原則といい、企業会計の基本的な考え方となっています。前払費用は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものですから、発生主義の原則により、これを当期の損益計算から除外するとともに、貸借対照表の資産の部に計上しなければならないのが原則です。前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち事業年度終了のときにおいてまだ提供を受けていない役務に対応するもののことをいいます。

 

適用要件

法人税法上は下記の要件を全て満たせば、支払対価の額が短期前払費用として全額損金算入ができます。

  1. 一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるための支出であること
  2. 役務の提供期間が1年以内のものに対する支出であること
  3. 支払った日から1年以内に提供を受ける役務であること
  4. 毎期継続して処理すること
  5. その費用が収益の計上と対応させる必要がないものであること
  6. 短期の前払費用を損金に算入するためには、現実に支払うこと(未払金に計上することは認められていません)。

 具体例としては、支払家賃支払地代借入金利子、損害保険料、生命保険料、雑誌等の購読料、諸会費、各種の賃借料などの諸費用を、1年分先払いしておくという決算対策があります。

前払金

短期前払費用の取扱いの適用があるのは前払費用だけであり、前払金や繰延資産には適用がありません。前払費用は、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用でなければならず、それにはサービスの等質性・等量性が要求されます。一方、新聞や雑誌の広告掲載料、テレビコマーシャルの放映料などを前払いしたもは、一定の時期に特定の役務の提供を受けるためにあらかじめ支払ったものであり、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるものではありませんので、前払費用ではなく前払金です。前払旅費についても同様です。また前払給料、弁護士や税理士の前払顧問料については、その役務提供が等質、等量ではないので、前払費用ではなく前払金です。

 

繰延資産

ソフトゥエアの使用料についてはその契約形態により異なります。一般にアプリケーション・プログラムは著作物とされ、それを使用するための支払方法には買取方式やレンタル料方式などがあります。レンタル料方式による契約であれば著作権の使用料と考えられますので、その支出は前払費用となりますが、買取方式であれば無形固定資産となります。

 

1年以内の考え方

前払費用のうち支出時に損金算入できるのは、「支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの」とされています。例えば 3月決算の法人が3月中に 5月1日から 1年分の火災保険料を支払った場合には、支払った日から1年を超えてしまうことから短期前払費用にはなりません。地代家賃については 1年を超えたとしても、わずかの日数であるような場合には、短期前払費用の特例が適用されると考えられます。例えば、 3月31日に4月1日から翌年3月31日までの地代家賃を支払った場合、厳密にいうと1年を超えてしまいますので、この要件を満たさないことになります。しかし、地代家賃については翌月分を当月中に支払う慣習(前払い)があること、また、1年を超える期間は非常にわずかで短期前払費用の特例を適用しても税務上特に弊害が生じないことから、支払った日に全額損金算入できるものと老えられます。

 

長期前払費用の取扱い

 1年以内の前払費用分なら損金算入を認めるというものではなく、企業会計上の短期の前払費用なら支出時に損金算入を認めるというものです。例えば、 5年分の火災保険料を前払いしたような場合、そのうちの1年分が損金に算入されるというわけではありません。長期の前払費用については、そのうちの当期の日数に対応する分だけ損金に算され、残額は長期前払費用として翌期に繰り延べることになります長期前払費用でも自賠責保険料については、強制加入となっていて一般損害保険料とはその性格が異なり、保険期間も最長3年であり、かつ、保険料も少額であることから、強いて期間対応して損金に算入する必要はなく、継続して支出時に損金に計上する経理処理も認められています。

 

重要性の原則

短期の前払費用について支払ったときに損金算入が認められるのは、企業会計上の重要性の原則を税務上も認めているからです。重要性の乏しいものにっいては、本来の厳密な処理によらないで、他の簡便な方法によることも認めるというのが、重要性の原則です。税務上も短期の前払費用についても資産計上するのが原則ですが、重要性の乏しいもの(金額が高くないもの)については、支出時に損金算入を認めるという趣旨です。反対に所得金額に影響を与えるほど金額の大きい短期の前払費用を損金に算入することは認められませんので留意する必要があります。これを「課税実務上」弊害がない場合といいます。

 

継続適用の考え方

短期前払費用として認められるためには、「その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金に算入」する必要があります。費用の支出そのものが反復継続かは問いません。ただし、この短期前払費用を悪用して一括損金し税負担を減少させる場合には適用されません。

 

以上が短期前払費用の取扱ですが、皆さん、ご理解頂けましたか?会社が決算月に損益を計算してみたら、予想以上に所得が多くなるので、実務上は①前払家賃や②前払保険料(逓増定期型)で 決算月に1年分前払いするケースもあります。ただし、前払保険料は何度も税制改正されていて、必ずしも全額損金とならないケースも税務調査で指摘される場合もあるので、くれぐれも保険料を前払いで1年分一括で支払う際は保険会社や顧問税理士にご相談されるのがベストだと思います。土屋雅資