なんちゃって税理士のブログ

税理士、宅地建物取引士、相続アドバイザー 土屋雅資のブログです。 相続税を中心に、お得な節税情報等を発信していきます。

借地権⇔貸宅地

ヤッホー!皆さん、今回から「相続税の本来の財産」である土地、建物の評価額の更地(自用地)以外をお話しをしていきますね!今回は「借地権」をご説明しますね!

<借地権とは>

借地権とは「建物の所有を目的とし、その建物を建てるために土地を借りる権利で、土地を借りている者は地代を支払う事」をいいます。要は、「自己所有の建物を建てるため、他人の土地を借りる権利」の事です。借地権とはあくまでも「建物の所有を目的とした土地の賃借権(地上権含む)である」ということです。従って、下記3つのケースは借地権は発生しません。

<借地権が発生しない場合>

  1. 駐車場資材置き場として土地を貸す場合(建物が建っていません)
  2. 被相続人(父)の土地の上に相続人(長男)が長男所有の建物を建てて、土地使用料(地代)は払っていない。要はタダ(無償)で借りる事です(これを使用貸借といいます)・・・借地権は地代(世間相場並み)の支払いが必要だからです。
  3. 長男が土地の固定資産税程度(実費)を負担している場合

今回は土地・建物が個人間の「借地権」を前提としますね!法人が介在すると税法では、「借地権」の課税関係が変わってきますので注意して下さいね。例えば土地は被相続人所有(個人)、建物は被相続人が所有する同族会社(法人所有の建物など)の場合です。

<借地権の名称>

土地を借りる側を『借地権者』といい土地を借りる権利を持つ人=土地の地代を支払う人の事です。それに対して貸す側『借地権設定者』とは借地権を設定している者(地主=底地権者=貸宅地)を指します。借地権には「賃借権」「地上権」などがありますが、そのほとんどは「賃借権」を指します。土地の賃借権である「借地権」は、『借地権者』が非常に強い権利をもっていて、実質的には、借りている土地の使用、収益権がありますので、被相続人(父)が『借地権者』としての財産(更地=自用地の概ね60%~90%)として評価されます。

もし被相続人(父)が『借地権者』70%地域の土地なら更地(自用地1億円=相続税評価額)×70%=7,000万円の評価額、土地を貸している地主『借地権設定者』が亡くなった場合(税法上は底地権者=貸宅地とも言います)は30%(100%-70%)で3,000万円の評価額になります。

建物を所有するための賃借権は平成4 年8 月1 日以降に制定された「借地借家法(新法)」が適用されていますが、新法以前の契約は「旧借地法(旧法)」が適用されます。この旧法は現在でも多く存在し、おおむね旧借地法がそのまま適用されています。ただし新法は施行後に締結された契約だけに適用されますので注意が必要です。被相続人が借地上に建物を建てて住んでいて、相続人がその建物を相続により取得し、かつ、継続して居住すると想定すると、借地権を相続することになります。その場合には、借地権の相続財産評価が必要になります。それでは、相続税を計算する際に、借地権の評価方法について解説しますね。

<借地権の評価>

  1. 借地権の評価方法は?・・・借地権の相続財産評価は、借地権が設定されている土地の更地としての相続財産評価額に、借地権割合を乗ずることで行います。借地権割合については、路線価方式で評価する宅地については、路線価には、借地権割合を表示するアルファベット(A~G)記号が設定されていますから、その記号から読み取ります。(国税庁のHPから閲覧可能)一方、倍率方式で土地の評価を行う地域については、国税庁で公表している評価倍率表(国税庁のHPから閲覧可能)から、評価対象地の借地権割合を調べることができます。
  2. 借地権の相続財産評価は?・・・例えば、土地の相続財産評価を路線価方式で行う地域で、路線価が100万円/㎡、地積が100㎡の宅地に設定されている借地権を相続により取得したとします。まず、対象土地の更地(自用地)としての評価額は、100万円/㎡×100㎡=1億円となります国税庁のHPで、路線価図に表記されたその路線価の借地権割合C=70%だったとします。すると、この宅地に設定された借地権の価額は、1億円×70%=7,000万円となり、この価額が、相続により取得する借地権の価額になります。ちなみに、土地を貸している地主(貸宅地)の評価額は幾らでしょうか?そうですね!1億円×30%=3,000万円です。これらの方法で計算された評価額は、あくまで相続税の計算のための評価額であるので、通常の取引における借地権の資産価値とは異なる場合があるので、注意が必要です。
  3. 借地権を相続する場合、地主の許可は必要か?・・・被相続人が借地上の建物に居住していた場合で、相続人が相続によりその建物を取得して、その建物に住むケースでは、借地権の相続による移転が行われます。その際、借地の所有者(地主)の承諾は不要です。借地借家法では、借地権を第三者に譲渡する場合には、地主の承諾が必要ですが、相続による譲渡の場合には地主の許可は不要です。なお、この場合には、相続人から地主に対して相続による借地権の譲渡があったことの通知が必要になります。この「借地権」は『借地権者』に手厚い保護規定ですから、地主(土地を貸して安い地代を受領している)にとっては、自分の土地を自由に使えませんから、実務上は地主の遺言書を作成する時に、「絶対に土地は他人に貸してならぬ!」という付言事項を記載してある例がよくあります。付言事項には法的効力はありませんが、それだけ地主にとっては、「借地権者憎し!」という想いの表れだと思います。借地権に関しては、民法の他に、借地借家法民法を「一般法」といい借地借家法を「特別法」といいます)も適用されます。「特別法」が「一般法」より優先しますので、借地借家法の規定が民法より優先する事を覚えておいて下さいね!
  4. 親子間での借地権は?・・・実務上注意が必要なのは、前述した「被相続人(父)の土地の上に相続人(長男)が長男所有の建物を建てて、土地使用料(地代)は払っていない(使用貸借)」ケースです。長男が父に生前に固定資産税程度を払っていた場合も同様です。では、相続税法上はどうなるでしょうか?この場合は地代の支払いが無いので、「借地借家法」は適用されません。従って被相続人(父)の土地は自用地(相続税評価額)となり、長男は借地権ゼロとなります。ただし昭和48年11月1日以降の「使用貸借」の場合に適用されますので、昭和48年10月30日以前から親子間で土地の「使用貸借」が行われている場合には、被相続人(父)の土地は底地(例えば借地権割合30%の場合で自用地が1億円の場合)3,000万円となるケースもありますから、注意して下さいね!これを「時効の借地権」といいます。

次回は、よくハウスメーカーが「相続税対策」として売りまっくている「地主が賃貸アパートや賃貸マンションを経営をする」=「貸家建付地」をご説明しますね!土屋雅資