なんちゃって税理士のブログ

税理士、宅地建物取引士、相続アドバイザー 土屋雅資のブログです。 相続税を中心に、お得な節税情報等を発信していきます。

法人税・欠損金・繰戻還付

ヤーホー、皆さん、こんにちは!今回は皆さんの経営している会社が設立年度に赤字(税法上は欠損金といいます)になったか、または3年間黒字(毎期法人税等を納税していた)で4年目にリーマンショク級の大不況になって赤字(欠損金)になってしまった場合の法人税法上の取扱をご説明しますね!

 

繰越欠損金とは

欠損金とは税務上の赤字のことをいいます。会計上では、収益から費用を差し引いたものが利益であり、収益より費用が多いと赤字であるといいます。一方、税務上では、益金(収益)から損金(費用)を差し引いたものが所得となり、益金より損金が多い場合、所得がマイナスの場合のことを欠損金が生じている状態といいます。

 

繰越欠損金を利用するメリット

  • 欠損金は翌期以降(9年間)繰り越すことができます。
  • 翌期以降に課税所得が発生した場合に繰越欠損金と相殺することにより、課税所得を減らし、結果として税金が少なく済むようになります。

<例1>①1年目に繰越欠損金が-100万円発生

    ②2年目の所得は150万円 ③実効税率40%

  1. 繰越欠損金の利用ありの場合青色申告
  2. 課税所得:150万円 -100万円 = 50万円
  3. 法人税: 50万円×40% = 20万円

 <例2>上記<例1>と同じ条件で繰越欠損金の利用なしの場合

  1. 課税所得:150万円白色申告)
  2. 法人税:150万円 × 40% =60万円
  3. 繰越欠損金が適用出来ないので税金が40万円多くなります

 

繰越欠損金の利用要件

繰越欠損金を利用すると、翌年以降の税金を少なくすることができます。ただし、全ての企業が適用できるわけではありません。また、所得から控除できる繰越欠損金の限度額なども定められています。資本金が1億円超の会社の事です。今回は、資本金1億円以下の会社について、繰越欠損金を利用するための要件についてご説明しますね。

 

法人の要件(下記要件の全てに該当)

  • 欠損金額が生じた事業年度において青色申告である確定申告書を提出している法人
  • その後の各事業年度も連続して確定申告書を提出している法人
  • 欠損金が生じた事業年度で青色申告法人であれば、その後の事業年度で白色申告法人でも欠損金の繰越控除は適用されます。
  • 帳簿書類等を保存していること
  • 欠損金の繰越期間・・・9年
  • 所得の金額を全額控除することが可能

 

欠損金の繰戻還付制度

欠損金の繰戻還付制度とは、前期に所得が発生していて、当期は欠損金が生じた場合に、その欠損金を前期に繰戻して、前期に支払った法人税額の還付を受けることができるという制度です。

 

適用対象法人

  • 前期(所得が発生した期)と当期(欠損が発生した期)について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること
  • 当期の青色申告書である確定申告書を、その提出期限までに提出していること
  • 当期の確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること

 

繰戻還付と欠損金繰越控除の違い

  1. 繰戻還付制度は欠損金を前期に繰戻し今期税金の還付を受けるか
  2. 繰越控除では欠損金を翌期以降に繰越し将来還付を受けるか

という点で長期的に考えるとあまり大きな違いはありません。ただし、前期は所得が発生したが、当期以降長期的に所得の発生(黒字化)が見込めない場合や、直近の資金繰りをよくしたい場合には繰戻還付を選択した方が有利になるといえます。

 

個人の純損失の繰越

所得税(個人)にも青色申告を選択している個人事業主が事業所得などで赤字となった場合は、損益通算を行ってもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)を3年間繰り越すことができます。また、前年も青色申告している場合には、純損失の繰越控除に代えて、その損失額を前年に繰戻して前年の所得税の還付を受けることもできます。

 

 実務上、よく受ける件で「先生、繰戻還付を請求したら、税務署は税務調査にすぐ来るんじゃないですか?」という社長からの質問です。適正に納税をした税金を、会社の経営状態の悪化で欠損金が生じたのですから、「租税法律主義」からすれば「法律に従って手続きをしているので、税務調査など心配しなくても大丈夫ですよ」と私はお答えしています。また繰越欠損金は法人税の負担を減らすことができるため、企業はぜひ利用したい制度です。ただし繰越欠損金が9年間続くということは、9年間赤字続きですから、その前に通常は会社は倒産しちゃいます・・・。土屋雅資