なんちゃって税理士のブログ

税理士、宅地建物取引士、相続アドバイザー 土屋雅資のブログです。 相続税を中心に、お得な節税情報等を発信していきます。

所得税・競馬 馬券事件

ヤーホー、皆さん、こんにちは!今回は、ちょっと話題を変えて、競馬の馬券の当たり券の裁判をご紹介しますね.皆さんは、競馬・競輪等の公営ギャンブルをやりますか?私は、競馬新聞読んで研究するのは不得意なのでしませんが、皆さんは「万馬券」という言葉を聞いた事ありますか?

例えば皆さんが千円(1,000円)の馬券を購入してこれが万馬券だと、1,000円×10,000=1,000万円ですよね~。すごい所得(儲け)ですね。でも、仮にこの馬券を当てるために1,000万円分の馬券を買っていたら、儲けはゼロですね!でも、所得税法では、馬券の当たり券の所得は下記の判決がでる前は、「一時所得=(総収入金額-必要経費-50万)×1/2」という計算で課税していました。このケースでは1,000万円-1,000円=万馬券に対応する当たり馬券だけ-50万」×1/2=約475万が課税所得金額になります。

ポイントは、万馬券に対応する馬券だけを必要経費として控除し、はずれ馬券は必要経費とは認めないよ~。という取扱でした。では納税者(申告していないので脱税者ですが)が、一時所得はおかしい!雑所得=収入金額-必要経費(はずれ馬券含む)で計算してくれー!と課税庁(税務署)と裁判を提訴し、大阪地裁→大阪高裁→最高裁まで争った事案です。

 

競馬脱税裁判

大阪市の元会社員が大阪国税局の税務調査で、2007年から09年の3年間インターネットで28億7000万円の馬券を購入し、払戻金30億1000万円を得た。一般的なサラリーマンの場合、一時所得のもうけが年90万円を超えると申告義務が生じるが、元会社員はこれを怠ったとして大阪国税局が税務調査。6億4000万円の所得税が課され、検察(=課税庁)は払戻金を申告せず5億7000万円を脱税したとして起訴した。5月23日の大阪地裁は所得税法違反は認めて、懲役2月・執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡した。しかし、「所得区分については一時所得には該当せず利益は外れたレースも含めて継続的に馬券を購入してきた結果によるもので、当たった馬券の購入代だけでなく、外れ馬券の代金も必要経費になる=雑所得」という元会社員側の主張を認め、5200万円に減額した。

 

一時所得か雑所得か?

  • 馬券購入費⇒28億7,000万円
  • 当たり馬券 ⇒30億1,000万円
  • 収支総額  ⇒+約1億4,000万円

元会社員の男性が 2007~2009年の3年間に、上記の所得を得ていたことが発覚し、課税庁は「一時所得」にあたると主張し、当たり馬券に関係ない外れ馬券は必要経費としては認められないと主張。(総収入金額-当たり馬券の購入費) -50万円}×1/2=約14億5,000万円が課税対象となり、所得税額、約5億7,000万円を申告しなかったと指摘し裁判が行われていました。そして2013年5月23日、外れ馬券については「経費と認められる」と判断し実質、元会社員の男性側の勝訴の判決となりました。

 裁判長は「納税者は娯楽ではなく資産運用として競馬を行っていた」と指摘。所得から控除できる必要経費について「当たり馬券の購入額だけ」とする課税庁の主張を退け、「外れ馬券分も必要経費に含まれる」との判断を示し、課税額を約5億7,000万円から約5,200万円に大幅に減額されました。 今回、納税者は「雑所得」を主張し、課税庁は「一時所得」と主張。結果、裁判長は雑所得と認め、外れ馬券だけでなく、競馬ソフトのデータ利用料なども経費にあたる雑所得と判断しました。

 

裁判要旨(最高裁)  

2015年3月10日、最高裁も一審、二審同様に、「払戻金は雑所得に当たる」と判断し、「外れ馬券を含む一連の馬券購入が一体の経済活動であり、全ての購入費用が払戻金という収入に対応している」と述べ、外れ馬券購入費を経費と認定しました(検察側=課税庁の上告を棄却)。 

  1. 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例
  2. 競馬の外れ馬券の購入代金について,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとされた事例

法令解釈

  1.  馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして,当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係(判文参照)の下では,払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる。

  2. 外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係(判文参照)の下では,外れ馬券の購入代は,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる。

所得税法基本通達34-1 

 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。

(1)懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)

 (2)競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)

(注)1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。

2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。

 上記アンダーライン部分が最高裁に対応して課税庁が改正した部分です。

 

今回の競馬事件で、従来から「一時所得」として課税されてきた競馬の馬券の払戻金が一定の要件を満たせば「雑所得」に該当すると変更された事案です。私見ですが、今回の納税者は何十億円も動かして競馬を事業として行っているので、最高裁の判断は妥当だと考えています。でも、私のクライアントにこんな方いないんですけど。実務上は、例えば、1,000円で購入した当たり馬券が10万円になっても、交換所で現金でもらったら申告する方はいません・・・。土屋雅資